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『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻129号)』(転載)

二木立

発行日2015年04月01日

出所を明示していただければ、御自由に引用・転送していただいて結構ですが、他の雑誌に発表済みの拙論全文を別の雑誌・新聞に転載することを希望される方は、事前に初出誌の編集部と私の許可を求めて下さい。無断引用・転載は固くお断りします。御笑読の上、率直な御感想・御質問・御意見、あるいは皆様がご存知の関連情報をお送りいただければ幸いです。


目次


1. 論文:「地域医療連携推進法人制度」案をどう読むか?
(「深層を読む・真相を解く」(41)『日本医事新報』2015年3月21日号(4743号):17-18頁)

厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」(以下、「検討会」)は2月9日「地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直しについて」の「取りまとめ」を行いました。これは2月18日の社会保障審議会医療部会でも示され、多くの委員から疑問が出されましたが、事務局は了承されたとの認識を示し、通常国会に医療法改正案を提出する予定です。

本稿では、「地域医療連携推進法人制度(仮称)」(以下、非営利新型法人)に絞って検討します。結論的には、この法人は当面はほとんど普及しないと思いますが、「とりまとめ」には将来的な医療の営利産業化につながる火種が残っています。

地域医療連携推進法人制度に至る議論の迷走

非営利新型法人検討の出発点は、昨年6月の閣議決定「『日本再興戦略』改訂2014」が「複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする『非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)』を創設する」としたことです。

ただし「検討会」は、この閣議決定に先立ち2013年12月4日(第3回)から、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」の検討を始めました。しかし、本連載(38)(本誌4725号)で指摘したように、産業競争力会議や松山幸弘氏等の提唱した、アメリカ型の「医療産業集積の核となりうるメガ非営利事業体(IHN)」は早々と否定されました。

その結果、第4回以降は、「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年8月)が「地域における医療・介護サービスのネットワーク化を図る」ための制度の見直し策の一例として提起した「非営利ホールディングカンパニー」の具体化が検討されました。

しかし、第6回検討会(昨年9月10日)では、田中滋座長自らが「非営利ホールディングカンパニー」という名称への「違和感」を表明したため、第7回検討会(昨年10月10日)で厚生労働省は名称を「非営利新型法人制度」(仮称)に変えると共に、これの設立の趣旨が「地域包括ケアをさらに進めるため」であると明言しました。その後、新型法人の名称として「地域連携型医療法人制度」(厚生労働省)と「統括医療法人」(日本医師会)が提案されましたが、最終的に「地域医療連携推進法人制度」にまとまりました。ただし、非営利新型法人の創設の趣旨は、「地域包括ケアをさらに進めるため」から、「地域医療構想を達成するための一つの選択肢」に変わりました。

厚生労働省の検討会等で、議論がこれほど迷走し続けたのはきわめて稀です。

医療の営利産業化は否定され、「アライアンス」的要素も加わった

しかし私は、日本医師会の対案提示や検討会委員の良識ある発言により、産業競争力会議等が目指していた、医療の営利産業化につながる巨大「非営利ホールディングカンパニー」が否定され、非営利新型法人の事業範囲が「地域医療構想区域」を基本とすることとされ、しかも参加法人が非営利法人に限定される等、何重もの「非営利性の確保」のための方策がとられたことには意義があると思います。

もう1つ注目・評価すべきことは、非営利新型法人の「参加法人の統括方法」として、「予算等の重要事項についての関与の仕方としては、意見聴取・指導を行うという一定の関与の場合と、協議・承認を行うという強い関与の場合のどちらかにするかを事項ごとに選択できる」とされたことです。これは、産業競争力会議が、非営利ホールディングカンパニー型法人についても、一般企業のホールディングカンパニーと同じ「一体的な経営」=「強い関与」を想定していたことからの大きな転換です。実は「取りまとめ」の原案(1月30日の第9回検討会)では「新型法人の業務内容」のトップに「統一的な事業実施方針の決定」という強い表現が用いられていたのですが、最終版ではそれが「統一的な連携推進方針(仮称)の決定」との弱い表現に変えられました。

加納繁照氏(日本医療法人協会会長代行)は、早くから「非営利ホールディングカンパニー」を批判し、それに対置して参加法人が経営的自律性を保ちつつ連携・提携する「地域包括ケア・アライアンス」を提唱しています(「大阪府私立病院ニュース」2014年9月号等)。堺常雄氏(日本病院会会長)も最近の対談で、同様に、「病院間の連携をアライアンスのような形で行う必要がある」と主張しています(『病院』2015年3月号:163頁)。「取りまとめ」の上記規定は非営利新型法人が「アライアンス」に近づいたことを示しています。

(持分のない)医療法人の開設者の強いオーナー意識・「一国一城の主」的感覚を考えると、同一地域でライバル関係にある法人の経営統合は極めて困難であるため、この変更は現実的だと思います。

ただし、私は、非営利新型法人は、同じ理由から、少なくとも当面はほとんど普及しないと思います。非営利新型法人の経営的メリットの1つとして、病床過剰地域での参加法人間の「病床の融通を認める」ことがあげられていますが、これには「地域医療連携推進協議会(仮称)の協議を経る」等、たくさんの縛りがついています。そのため、経営力・資金力のある病院グループは、開設手続きと運用が煩雑な非営利新型法人を設立するより、既存病院のM&Aによりグループの大規模化を目指すと思います。

将来的な医療の営利産業化の3つの火種

最後に、「取りまとめ」には、将来的に医療の営利産業化につながる3つの火種が残っていることも見落とせません。

第1は、2月9日の第10回検討会の「資料2」の「地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設による地方創生の取り組み」のイメージ図の中に、「メイヨー・クリニックの特長」(「メイヨーブランド」の確立、70医療機関のアライアンス、事業規模約9000億円、職員数約6万人)が、何の脈絡もなく書き込まれていることです(ただし、検討会ではこれの説明も質疑もなされませんでした)。非営利新型法人とは対極にあるこのような「メガ医療事業体」が挿入されたのは、昨年1月のダボス会議で安倍首相が「日本にもメイヨー・クリニックのようなホールディングカンパニー型の大規模医療法人ができてしかるべき」と発言したことに対する、担当者の苦肉の対応と思います。しかし、今後、安倍首相が、これを根拠にして、「国家戦略特区」(特に東京圏と関西圏)で、地域医療構想区域の枠を超えた広域の「メガ医療事業体」を特例的に認可する可能性も否定できません。

第2の火種は、非営利新型法人の「関連事業を行う株式会社・一般社団法人等への出資」について、「例えば100%にする等一定割合以上とすることを条件」に認めるとされている点です。これは100%未満の出資も認めることを意味し、その場合は株式会社等から得られ、本来は医療事業の再生産に当てられるべき資金が、非営利新型法人とは別の出資者を通して、医療の外部に流出することになります。

第3の火種は、非営利新型法人が当初予定されていた医療法人ではなく、「医療法人等を社員とする社団型を基本」とすることとされたため、医療法人と異なり、(1)理事長が医師であるとする縛り(原則)が外され、しかも(2)議決権についても1社員1票以外の定めを定款ですることができることです。私は、特に(1)が危険だと思います。なぜなら、医療法第46条の3は、理事長を原則として「医師又は歯科医師」に限定しており、これが医療法人の剰余金の配当禁止規定(第54条)と並んで、医療法人の非営利性の担保の重要な規定となっているからです。この規定が、理事長である医師に対して、医療倫理と経営の論理(利益の最大化)が対立した場合、前者を優先させる抑止効果を持っているのです(拙著『TPPと医療の産業化』勁草書房,2012,94-95頁)。

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2. インタビュー:介護職員の待遇改善を
(「朝日新聞」2015年3月23日朝刊4面。「報われぬ国 負担増の先に 総集編上 支え合い保つには 高齢化の中で 識者に聞く)

医療福祉政策を考えるときは、歴史に学ぶことが大事だ。介護職員は2025年度に全国で約30万人が不足するともいわれ、絶望的にもみえる。ただ、今の状況は1990年前後の看護師不足とよく似ている。当時、看護師は「3K」(きつい、きたない、きけん)などと言われ、病院内での地位や給料も低かった。

それが92年以降の診療報酬改定で、看護の報酬が大幅に引き上げられた。より高い配置基準(患者数対比の看護師数が多い病院ほど報酬も多くなるしくみ)も導入され、看護師が増えて労働環境がよくなった。

あわせて、4年制大学の看護学部が増え、高学歴化が進んだ。卒業後も、専門性を高める「卒後教育」を看護協会などが推し進めた。それで給与が改善され、看護師の社会的な地位も高まる好循環になった。近年は離職率も下がり、今や花形職業だ。

介護職の場合も解決策は同じだ。介護報酬を引き上げ、介護職員の配置基準を高めるべきだ。事業者は報酬が高くなれば、正職員を増やせる。今は非正規職員も多いが、長く勤める正職員になら、技術を高めてキャリアアップさせる研修にお金を出しやすくなる。

その意味で、今年の介護報酬の大幅引き下げは、時代の流れに反する。財源がないというが、そんなことはない。日本の中間層の税や保険料の負担は欧州より少ない。介護も医療も保険料の引き上げは避けられない。低所得者には配慮しつつ、所得税の累進制強化など、高所得者により負担してもらうことが必要だ。

ケアは可能な限り自宅で受けるのが理想だが、一人暮らしなどで難しいケースもある。それでも、厚生年金をもらっているようなある程度お金のある人は、民間の有料老人ホームや「サービス付き高齢者向け住宅」などに入れるだろう。

問題は、とくに都会で国民年金だけで暮らすような低所得の人たちだ。安く入れる特別養護老人ホームを増やすとしても、自治体の予算などで限界がある。集合住宅の空き室や、安価な宿泊所のようなところに住んでもらい、訪問で必要な介護サービスを提供するなど、行政が工夫していく必要があるのではないか。 (聞き手・生田大介)

【参考:看護婦(看護師)不足と介護職不足についての私の過去の分析・主張】

看護婦(当時の呼称)の仕事が、現在の介護職の仕事と同じく、3K~6Kと言われ、看護婦不足は宿命的とみなされていた1991年に、私は「病院管理者の意識改革・職場の民主化と合わせて、看護婦の給与・労働条件改善が実施されれば、看護婦不足は十分に解決可能だ」と主張・予測しました(『複眼でみる90年代の医療』勁草書房,1991,4章2「看護婦不足解決の条件はあるが、看護業務見直しと補助者導入も不可避」,160-172頁)。

介護保険制度が始まった直後の2001年のインタビュー「訪問介護の主役は長期的には介護福祉士」で、日本の介護福祉士の教育レベルは「世界最高水準」であり、「専門職は給与が保証されれば在宅に向かう」と指摘すると共に、「今のままでは、10年前に生じた『看護婦不足』と同じような『介護職不足』が起きる危険がある」と警告しました(『21世紀初頭の医療と介護』勁草書房,2001,第2章4,172-178頁)。

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3.最近発表された興味ある医療経済・政策学関連の英語論文

(通算110回.2015年分その1:6論文)

○[アメリカの]患者保護・医療費負担適正化法施行後早期の雇用者提供[医療]保険の変化の検討
Blavin F, et al: An early look at changes in employer-sponsored insurance under the Affordable Care Act. Health Affairs 34(1):170-177,2015.[量的研究]

2014年に本格実施された患者保護・医療費負担適正化法(ACA)の批判者は、それが雇用者提供医療保険存続の脅威になっているとしばしば述べる。メディケイドの適用拡大と(各州に設置される)「医療保険取引所」の補助金が、雇用者が労働者に医療保険提供を申し出るインセンティブと、労働者がそれを受け入れるインセンティブの両方に悪影響を与えるとされている。本論文では、2013年6月~2014年9月の「医療改革モニタリング調査」を用いて、労働者の視点から、ACA施行後の雇用者提供医療保険の申し出率、受け入れ率、加入率の早期の変化を調査する。ACA施行後これら3比率が低下しているとのエビデンスは全くなかった。これら3比率は、ACA施行前後で一定であった:全労働者ではそれぞれ82%、86%、71%、低所得労働者ではそれぞれ63%、71%、45%であった。この結果は、ACA施行後も、労働者が雇用者から医療保険の提供を受ける経済的インセンティブが強いことを示している。

二木コメント-日本でベストセラーになっている堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』(集英社新書,2014)は、「マッキンゼー社の調査によると、全米企業の約半数が罰金を払って企業保険を廃止するほうを選んだ」(72頁)と書いていますが、これはトンデモ数字です。この点に限らず、この本の第1~3章のオバマケア批判の相当部分と第4章「次のターゲットは日本」の大半は事実誤認か超一面的であると思います。

○革新的技術に対応したアメリカ[・メディケア]の病院支払いの調整はドイツ、フランスと日本に遅れをとっている
Hernandez J, et a: US hospital payment adjustments for innovative technology lag behind those in Germany, France, and Japan. Health Affairs 34(2):261-270,2015.[政策比較研究]

メディケアは病院への包括払い方式の下で、革新的技術(医療機器)の導入を促進するための追加支払いにおいてパイオニア的役割を果たした。アメリカの政策担当者は、現在、より広い価値に基づく支払い方式について実験しているが、その際技術革新の調整は行っていない。本論文は2001年に導入されたメディケア新技術追加支払いプログラムの構造、プロセス及び実績を検討すると共に、ドイツ、フランス、日本における同種の支払い方式と比較する。2001~2015年にCMS(メディケア・メディケイド・サービスセンター)は新技術追加支払いプログラムに申請した53技術のうち19技術を承認した。それによるメディケアの支払い増は2002-13会計年度で2億170万ドルであるが、これは議会が当初予定した額の半分以下、CMSが予測した額の34%に過ぎなかった。アメリカの本プログラムが承認した革新的技術の数(19)は、ドイツ、フランス、日本が同種支払い方式で承認した数と比べてはるかに少ない(ドイツ234、フランス745、日本265)

二木コメントー革新的医療技術(医療機器)の承認・保険収載についての詳細な国際比較です。日本では、医療機器の承認時期が海外に比べて遅いこと(「デバイスラグ」)が問題視されますが、本論文を読む限り、それは「神話」あるいは極めて一面的なようです。

○マクロ経済が医療保険加入率に与える影響:[アメリカにおける2007~2009年]大不況から得られたエビデンス
Cawley J, et al: The impact of the macroeconomy on health insurance coverage: Evidence from the Great Depression. Health Economics 24(2):206-223,2015.[量的研究]

2007~2009年の大不況期を含む、2004-2010年の「所得・医療保険加入率調査」のパネルデーデータを用いて、マクロ経済がアメリカ人の医療保険加入率に与える影響を調査した。州レベルでの失業率の1%ポイントの上昇は医療保険加入確率の1.67%ポイント低下と関連していた。この関連は、大卒・白人・50~64歳の男でもっとも強かった。それに対して、女と子どもでは失業率と医療保険加入率との間に有意の相関はなく、これは公的医療保障が社会的セーフティネットの役割を果たしているためと思われる。今回の不況では、過去の不況に比べ、男の医療保険加入率と失業率との関連が強かった。

二木コメント- 国民皆保険が存在しないアメリカでは、大不況が男の医療保険加入率をすぐに引き下げたことがよく分かります。

○病院の生産効率の向上:国際的エビデンスの文献レビューから得られた知見
Rumbold BE, et al: Improving productive efficiency in hospitals: Findings from a review of the international evidence. Health Economics, Policy and Law 10(1):21-43,2015.[文献レビュー]

現在、すべてのヨーロッパ諸国は、以下のような同一の課題に直面している:人口構成の変化、複数疾患同時罹患と慢性疾患の増加、医療費の増加、公的債務増加等の経済不況の後遺症。このような視点から、本研究では二次医療(病院医療)における生産効率向上方策についての国際的エビデンスの文献レビューを行う。本論文は、HurstとWilliamsが2012年に発表した文献レビュー("Can NHS Hospitals Do More With Less?" Nuffield Trust.ウェブ上に全文公開、全92頁)を更新・拡張するものであり、特に政策環境、病院マネジメントおよび運用プロセスに対する介入のエビデンスについて詳述する。得られた知見に基づいて、政策決定者や実務家が病院内で生産効率を向上させるための、以下の5つの主な教訓を示す:(1)すべての病院での効率向上に注力する。(2)全力でバラツキの縮小に取り組む。(3)医療費支払い諸組織、全国基金、および全国計画組織の役割について注意深く考える。(4)正しい測定が決定的。(5)国際比較は有用。

二木コメント-分析枠組みはしっかりした大規模文献レビューですが、得られた「教訓」はやや月並みかつ思弁的と思えます。

○フランスとアメリカの再入院率の比較
Comparison of rehospitalization rates in France and the United States. Journal of Health Services Research & Policy 20(1):18-25,2015.[量的研究・比較研究]

本研究の目的は、フランスとアメリカの病院全国データを用いて、65歳以上の個々の入院患者の退院後30日以内の再入院率を比較し、その理由を説明することである。フランスの退院患者の再入院率の要因は段階的重回帰分析により検討した。フランスの再入院率は14.7%(2010年)で、アメリカの約20%(2007~2011年)より低かった。フランスでは、年齢、性、患者の疾患と入院した病院の所有形態のすべてが再入院率と相関していた。フランスの再入院率がアメリカより低い理由としては、フランスのプライマリケアのアクセスの良さ、フランスの高齢者の健康状態の良さ、フランスの病院の在院日数の長さ、(退院患者の受け皿となっている)フランスのナーシングホームはアメリカと異なり、入所者を再入院させる経済的インセンティブを有していないことが考えられる。

二木コメント-フランスとアメリカの比較は全患者の再入院率のみで、再入院率の要因分析はフランスの患者のみを対象にしている点で、「羊頭狗肉」とも言えますが、視点は面白いと思います。

○[イギリスの]病院市場集中度と股関節置換術後患者の健康状態改善との関連
Feng Y, et al: Association between market concentration of hospitals and patient health gain following hip replacement surgery. Journal of Health Services Research & Policy 20(1):11-17,2015.[量的研究]

病院市場集中度(病院間競争の代理変数)と非緊急股関節置換術を受けた患者が評価する健康状態改善との関連を評価するために、「患者報告アウトカム尺度データ」とイングランド「NHS病院統計」(2011/2012年。対象は337病院)とをリンクした。病院の市場集中度はHerfindahl-Hirschman 指数(HHI)で、健康改善はオックスフォード股関節指数(OHS。患者が12項目について0~4点で評価し合計)で測定した。HHIとOHSとの間には、全患者でも重症患者でも、危険率5%で有意な関連は無かった。手術前のOHSが平均より良かった12,583人の患者では、HHIの1標準偏差の増加(病院の地域市場での1病院の減少に相当)は術後OHS改善の0.104ポイント減少と関連していたが、やはり危険率5%で有意ではなかった。以上から、病院市場集中度(病院間競争の代理変数)は非緊急股関節置換術のアウトカムには有意な影響を与えないと結論づけられる。

二木コメント-手術アウトカムの指標として患者が評価する健康改善を用いた点が目新しいと思います。


4. 私の好きな名言・警句の紹介(その124)-最近知った名言・警句

<研究と研究者の役割>

<組織のマネジメントとリーダーシップのあり方>

<その他>


参考1:日本福祉大学2014年度学位授与式・学長式辞

(日本福祉大学ホームページより) (PDFファイルPDF)

皆さん、卒業おめでとうございます。卒業生を物心両面で支えていただいたご父母や保護者の皆さまにも、お祝い申し上げます。また、年度末でお忙しい時期にもかかわらず、式典にご参列いただいたご来賓の皆さまに、心よりお礼を申し上げます。

本日、私が卒業生の皆さんにお話ししたいことは3つあります。

第1は、本日3月21日は、あの東日本大震災・福島第一原発事故から、丸4年と10日目に当たることです。当時、皆さんも、私たちも、すべての日本国民も、さらには世界の多くの人々が、地震・津波・原発事故の被害の甚大さに衝撃を受け、打ちひしがれる一方で、被災された人々が冷静沈着に行動されたこと、およびそのような行動を支えた地域社会の「絆」の強さに心が洗われたと思います。私たち教職員にとって嬉しく、かつ誇りに思ったことは、それ以来4年間、多くの福祉大生が「災害ボランティアセンター」に参加し、被災地または愛知県でさまざまな支援活動を続け、それを通して人間的に大きく成長したことです。

しかし、残念ながら、被災地の復興は遅れ、本年2月現在、22万9千人もの人びとが、愛知県の1154人を含め、全国47都道府県で不自由な避難生活を強いられています。事故直後に掲げられた「原発ゼロ」政策も見直されました。それだけに、皆さんには、大学卒業後も、被災者支援を、できる範囲で、続けていただきたいと思います。その第一歩は、被災者を「忘れない」ことです。日本福祉大学も「災害ボランティアセンター」の活動を継続するとともに、将来起こる可能性が大きい南海トラフ巨大地震への備えを進めることを、皆さんにお約束します。本学は以前から、美浜町と大災害時の相互支援を含む「包括連携協定」を結んでいたのですが、本年は半田市、東海市、藤田保健衛生大学とも同じ協定を結びました。

第2に述べたいことは、皆さんが卒業される日本福祉大学が、日本でただ一つの、平仮名の「ふくしの総合大学」であることです。1953年度に中部社会事業短期大学、学生数わずか83人のごくごく小さい短期大学として産声をあげた本学は、61年の間に、3キャンパス・6学部、通学・通信課程をあわせて学生数1万人を超える大学に発展してきました。さらに来年度、この4月には名鉄太田川駅前に、第4の「東海キャンパス」を開設し、新たに看護学部を設置します。日本福祉大学は、これからも、すべての人々のしあわせ、本学の教育標語で掲げた「万人の福祉のために、真実と慈愛と献身を」目指す、「ふくしの総合大学」として発展し続けることをお約束します。皆さんも、本学で学んだことに誇りを持ち、職場と地域で積極的な役割を果たされることを期待します。

第3にお話したい、というよりお願いしたいことは、皆さんが大学を卒業した後も、継続して勉強し、可能な限り長い期間働くことです。ご承知のように、日本は今や世界一の長寿国で、男の平均寿命は80歳、女はなんと87歳に達しています。皆さんの大半は22歳だと思うので、平均すれば、男の卒業生はこれから後58年間、女の卒業生は65年間もの長い人生をすごすことになります。現在、企業の一般的な退職年齢・定年は60歳から65歳ですが、皆さんが高齢者になる頃には、それは少なくとも70歳、もしかしたら75歳になっているかもしれません。その場合、皆さんはこれから50年前後も、働き続けることになります。若い皆さんにとって、これは気が遠くなるような長期間と思います。しかし、日本が今後確実に、人口減少・超少子超高齢社会に突入することを考えると、これから50年前後働き続けることは、皆さん自身の生活を維持するためにも、日本社会を維持するためにも、避けられないことです。

私は、2月27日に愛知医科大学と本学が共催した第25回長寿社会フォーラムで、東海旅行鉄道株式会社(JR東海)相談役の須田寛様の講演を聞かせていただきました。須田様には本学経済学部の経営者講座等で何度も講義をしていただいています。須田様は84歳になられるそうですが、メモも見ずに細かい数字や人名、駅名などを話される抜群の記憶力と1時間半の講演中一度も水を飲まずにはりのある声で話し続けられる体力に、参加者一同圧倒されました。実は私は67歳なのですが、須田様のお話しに触発されて、今後最低15年間は「現役生活」、勉強と研究を続けようと決意しました。

須田様は例外的かもしれませんが、皆さんも、これから長期間働き続けるためには、日本福祉大学で学んだことを基礎にして、大学卒業後も、生涯、勉強・学習し続けることが必要です。本学は、そのための受け皿として、すでに、働きながら学べる通信教育部や各種の大学院を開設しており、それに加えて2015年度からは、皆さんの生涯学習を支援する「リカレント教育」も本格的に始めます。

皆さんが、これからの長い人生と長い勤務年限を有意義にすごし、今持っている様々な夢や希望を着実に実現すると共に、社会にもしっかり貢献することを期待します。最後に改めて、皆さん、卒業おめでとうございます。

2015年3月21日

日本福祉大学学長 二木 立


参考2:日本福祉大学2015年度入学式・学長式辞

(日本福祉大学ホームページより) (PDFファイルPDF)

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心より皆さんを歓迎します。ご両親、保護者の皆さま、そしてお忙しい中をご臨席くださいました来賓の皆さま、ありがとうございます。

本日、私が皆さんにお話ししたいことは5つあります。皆さんにしっかり理解していただくために、今年度からパワーポイントも使うことにしました。

第1に、日本福祉大学の原点についてお話しします。本学の原点・前身は今から62年前の1953年に創立された中部社会事業短期大学で、それが4年後の1957年に日本福祉大学に変わり、そのときに日本で最初の社会福祉学部を開設しました。中部社会事業短期大学が創立された当時の日本はまだ非常に貧しい国でした。本学の創立者で初代学長の故鈴木修学先生は、ハンセン氏病者や戦災孤児など、社会的に一番弱い立場にある人々の救済と幸せを願ってさまざまな福祉活動を行われる中で、大学教育で福祉の専門職を養成することを決意され、本学を設立されました。

鈴木修学先生の人となりとご業績は、日本福祉大学後援会から本日皆さんにプレゼントされた本『日本の福祉を築いたお坊さん』(星野貞一郎著。中央法規)に詳しく書かれているので、ぜひ読んで下さい。

第2にお話ししたいことは、このように福祉の単科大学として設立された日本福祉大学が、その後62年の間に、名古屋市と知多半島で少しずつキャンパスと学部を増やし、現在では、今年度新たに開設する東海キャンパス・看護学部を含めて、4キャンパス7学部4大学院研究科を持つ、「ふくしの総合大学」に成長してきたことです。

ここで、福祉を漢字ではなく、平仮名で表していることに注意してください。実は漢字の福祉は、「福」も「祉」も、もともとは「しあわせ」という意味を持っています。しかし、漢字で福祉と書くと、貧しい人々や社会で弱い立場にある人々のみを対象にしていると誤解されがちです。これが福祉の原点・中核であることは現在も変わりませんが、本学が創立されてから60年の間に、福祉の意味・対象・範囲は大きく拡大し、現在ではすべての人々のしあわせを目ざす活動を意味するようにもなっています。本学の教育標語、「万人の福祉のために、真実と慈愛と献身を」も、同じことを意味しています。そこで、本学は、このような広い意味での福祉、福祉の広がりを強調するために、平仮名で「ふくし」と表現しています。皆さんも、中学や高校の福祉教育の時間に、「ふくし」は「ふつうの(またはふだん)の、くらしの、しあわせ」を意味すると聞いたことがあるかもしれませんが、それと同じ趣旨です。皆さんには、どの学部、どの学科に入学したかにかかわりなく、この広い意味での「ふくし」の精神と知識と技術を身につけていただきたいと思っています。この点については、皆さんにもみていただいたハズの「日本福祉大学入門」講義で詳しく説明しました。

第3に、本学は昨年度、文部科学省が助成する「地(知)の拠点整備事業(COC:Center of Community)」に採択され、今年度から「ふくし・マイスター」の育成教育を始めることについてお話しします。COCとは大学が地域再生・活性化の拠点となることを目的とした事業で、助成を受けた大学は「地域のための大学」・「地域に根ざした大学」として、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献の取り組みを地域社会と連携して行います。

その重要な柱として、本年度入学者全員、つまり皆さんを対象にして、各学部の演習(ゼミなど)で「ふくしコミュニティプログラム」を行うと共に、1~3年次に各学部と全学教育センターの地域志向科目を開講します。これらは選択科目で、10科目20単位以上履修した学生に、卒業時に「ふくし・マイスター」の修了証を授与します。できるだけ多くの皆さんがこの資格を取得されることを期待します。なお、この「ふくしマイスター」については、入学式後のオリエンテーションで詳しい説明があります。

第4にお話ししたいことは、1985年1月28日、今から30年前に、長野県犀川のダム湖で起きたスキーバス事故のことです。学生22人、引率の教員1人、バス乗務員2人、合計25人もの尊い命を奪ったこの事故は、現在に至るまで、日本国内の大学で起こった最大・最悪の事故です。本日、皆さんは校門の坂を登り、ここに来られた時に、たくさんの桜の木が植えられていることに気づかれたと思います。この桜は、このバス事故で亡くなられた人々を慰霊するために植えられたもので、私たちは「友愛の桜」と呼んでいます。皆さんと同じ年代で、この世を去らなければならなかった無念は、いかばかりかであったと思います。残されたご遺族の哀しみは、30年経った今も癒えることはありません。私たちはこの事故を決して忘れないために、毎年事故のあった1月28日に慰霊祭を開くと共に、10月(今年は15日)に「安全の日」を設けて、さまざまな啓発活動を行っています。新入生の皆さんが、それらに積極的に参加することを期待します。

第5に、入学後は、講義・ゼミでしっかり学ぶと共に、サークル活動やさまざまなフィールド活動、ボランティア活動にも積極的に参加し、豊かな学生生活を送っていただきたいと思います。この点で、特にお薦めしたいのが、東日本大震災の被災者支援のボランティア活動への参加です。日本福祉大学は、4年前の大震災直後に「災害ボランティアセンター」を立ち上げ、教職員・学生が一体となって、支援活動を続けてきました。皆さんもご承知の通り、被災地の復興は遅れ、依然として23万人もの人々が避難生活を続けています。そのため、私たちは今後も長期間支援活動を続けます。新入生の皆さんが積極的に参加されることを期待しています。

日本福祉大学の7学部がある知多半島は、自然も、産業も、そして人間関係・人情もゆたかな土地柄です。美浜キャンパスのある知多半島南部は農業・水産業が活発で、風光明媚な地域です。半田キャンパスのある知多半島中部は、歴史・文化・観光資源の厚みのある地域です。東海キャンパスのある知多半島北部は、工業等の分厚い産業集積に加えて、近年東海キャンパスのある太田川駅前を中心にして文化都市へと変貌しつつあります。さらに、知多半島全体は、社会福祉法人やNPO法人による活発な福祉活動で全国的にも有名です。一説によると、知多半島は日本で一番「元気のある」半島とも言われています。この知多半島を舞台にして、皆さんが今後4年間、平仮名の「ふくし」について総合的に学び、立派な社会人になることを期待して、式辞といたします。

最後にもう一度、入学おめでとうございます。

2015年4月1日

日本福祉大学学長 二木 立

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