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石川勤医協での講師活動

「理事長のページ」 研究所ニュース No.5 掲載分

 角瀬保雄

発行日2004年01月25日


2004 年明けましておめでとうござ います。 今年は世界的にはブッシュの仕掛 けたイラク戦争、アメリカ大統領選挙 の行方と、国内では年金制度改悪など日本の社会保障のあり方が大きく問われる年になります。研究所も設立か ら1 年を経過し、機関誌は5 号を数え、他の研究所のそれと比べてみても読み応えのあるものになっていると思います。全日本民医連からの「診療報酬・介護報酬制度のあり方」に関する委託研究の報告書も出来上がりました。また会員からの自主研究の申し出や投稿の希望も寄せられるようになっています。韓国の医療運動との交流も進み、研究所の活動も全開に近づ いてきているように思えます。昨年私は、講師派遣事業の一環として石川民医連、青森民医連の研修会へ行く機会がありましたので、以下その感想の一端を述べてみようと思います。

石川民医連の場合は、「非営利・協同の理念と運動を学ぶ」というテーマで、勤務続年数別に30 人ずつのグループに分けた少人数単位の研修会で、延べ4 日間にわたりました。同じ内容を4 回繰返すことは、講師にとってはかなりハードでしたが、こうした顔のよく見える研修会はお互いにそれなりのメリットもあったように思います。勤続年数の若いグループでは「非営利・協同」という概念自体にまだなじみがなく、よくわからないという反応が返ってきました。小泉構造改革によって医療経営は厳しい状況に追い込まれ、収入が軒並みに減ってきています。そして経営の維持存続を図るためには経費の削減、人件費の削減に真正面から取組まざるをえなくなっています。こうした中で医療における「経営構造の転換」への対応として病院施設の新設が進められてもいます。したがって、「非営利」で、差額ベッド料なしの無差別平等の医療といっても展望が見えてこないという声が聞かれました。それに対して勤務年数の長いグループでは、「非営利・協同」と搾取の有無といったようなレベルの高い理論問題が問われたりしました。それなりの犠牲を払っても「全職員参加経営」による真に守るに値する院所を作ることが出来るか否かに、全てはかかっているように思われました。青森民医連の場合には、「民医連の経営と社会的役割」というテーマでの150 人規模の集会でした。弘前や青森にはこれまでも労協連や建交労の学習会で何回か訪れており、私の話を聞いたことがあるという人もおり、全体として参加者のレベルがかなり高い印象をもちました。時局柄、イギリスや北欧の福祉国家における社会保障と消費税との関係や民医連における生協法人と医療法人との比較論など突っ込んだ質問が出されたりしました。経理担当の人のなかには、会計学を本格的に勉強しようと、私の書いた全ての本を手に入れようと注文したという勉強熱心な人もいました。しかし残念なことに、絶版になっているものが多かったといいます。

こうした経験から今、医療・福祉の分野に限られず、「非営利・協同」陣営がどういう問題をかかえ、苦闘しているかが良く分かり、とくに日本の現状の分析を踏まえた、事態打開への方向づけと具体的な処方箋が求められていることを痛感しました。そのためには各地の院所で日夜奮闘されている人々の参加もえて、現場の役に立つ研究成果を生み出すことができればと思った次第です。

これからは様々な分野の、各地在住 の会員の講師活動への参加をお願いし、「非営利・協同」の陣営の多様な要望に応えていければと思っています。

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